岩井直溥氏と
高山市民吹奏楽団 創立30周年に寄せて
「魅力ある吹奏楽の明日に乾杯」
私は吹奏楽が好きなのです。
それはキラキラと輝くダイナミックなサウンドや重厚な迫力、また、多様な音の練り合わせによる斬新なハーモニーなど魅力は限りなく広がり、しかも吹奏楽は新しい感覚をかなり素早く気取らずに吸収し、見栄を張ることもなく人間のやる気を起こさせる活力ある音楽であり、その順応性に富んだ雰囲気が私を大いに引きつけるからなのです。
ところが、その素敵な吹奏楽を大切に育て上げているバンドが高山にあった。それが高山市民吹奏楽団なのです。
このメンバー諸君と初めての出会いは5年くらい前のこと。しかし実際には20数年前に2、3回静岡の市民バンド「コンセール・リベルテ」との合同演奏をした覚えがあり、その頃この吹奏楽団を熱心に指導されていたのが、今は故人となられた田中晃先生だったのをよく覚えているのです。そしてこの田中先生や熱心な地元の応援者の方々に支えられてきた高山市民吹奏楽団が今年、創立30周年を迎えるという。大変素晴らしいことだと思う。
一口に30周年とはいうもののバンドを30年間維持し続ける事は大変で、指導者や練習場のこと、バンドの編成や音楽的な問題、更に演奏会の企画、楽器や楽譜のことなど経済的なことも加わり、地元の方々の理解と支援がなければバンドの運営などは成り立つはずがないのですが、これらを見事にこなしてこられた歴代のメンバー諸君や役員のみなさん、更に絶大な応援をしてこられた地元の愛好者の方々に頭の下がる思いです。
勿論、当時のメンバーで、今、楽団に残って居られる方はごく僅かで化石的な存在となっていますが、彼らが尽くしてきた努力にも絶大な拍手を送るものです。
そして現在のメンバーは?と言うとこれがまた、学校の教師を中心とした大変ユニークな人材の集合体で、変わったことが好きで太っ腹なのが特徴の若者たちなのです。
彼らが取り組んでいる吹奏楽の殆どがアマチュア主流の音楽集団によって支えられているのですが、その言葉に接する姿勢にはプロ以上の情熱が溢れ、また、最近における彼らの技術的な向上を考えれば今後限りない可能性と魅力を生み出すことが出来ると思われるのです。
御存じのように、現在世の中の風潮は絶えず変化し多様化しているのですが、これは音楽の世界でも例外ではなく、古典を含めたクラシックからオリジナル、ミュージカル、ジャズ、ロック、ラテン、フォーク、フュージョン、更に歌謡曲、演歌、民謡などなど時代と共に色々なジャンルの音楽が生まれ育ち、しかもそれはかなりのスピードを持って私たちに迫ってくるのです。
このような時こそ、これら多分野の音楽をこなし、演奏を通して多くの方々に少しでも喜んでいただく。これも吹奏楽の魅力であり、その順応性に富んだ音楽を私はこよなく愛するのです。
このような時代に高山市民吹奏楽団のようなバンドがあることは大変心強く、近い将来彼らの演奏が今以上に大衆にアピールし魅了する音楽として脚光を浴びることは間違いないことだと思う。
私はこれからも、この愛すべきメンバーと共に息の長い吹奏楽活動を通して時代に即応した楽しいステージ作りに挑戦すると同時に、この大切な若者たちと彼らを支えて下さっている地元ファンの方々の毎日が何時までも幸せでありますように願わずにはいられないのです。
そしてみなさんと一緒に、改めて「高山市民吹奏楽団と魅力ある吹奏楽の明日に乾杯」しようではありませんか。
作・編曲、指揮者
岩井直溥
The談怪
又は「座談会をかねた飲み会」
(平成7年10月21日、練習を終えて)